秋の気配を感じさせる9月の夕暮れ時。
ナイターの光がグラウンド全体を包み込んでいた。
サッカー部の全体練習が終わった後、グラウンドの片隅でもくもくと自主練習に励む1人の生徒が。
よしおだ。
インターハイ県予選のメンバーに入れず、とても悔しい思いをした、よしお。以前は、体幹トレーニングの重要性を感じていなかったけど、仲間たちのプレーを見ていくうちに、その重要性を感じるようになった。(体幹トレーニングで世界をつかめ!サッカーが劇的に変わる効果と重要性)
そして、次の大会、全国高校サッカー選手権大会に向け、体幹トレーニングを自主的にやるようになった。
- 怪我が多いこと
- 1試合を通して安定したパフォーマンスを出せないこと
これらを克服するため、N先生から伝授してもらった体幹トレーニングに取り組んでいる。
目次
サッカーの体幹トレーニングメニューで超重要な2つのポイントは?
よしおは、N先生から体幹トレーニングをやる上で超重要な2つのポイントを聞いた。
- 正しい姿勢
- 意識する
どういうことだろうか?
正しい姿勢でやる
体幹トレーニングで重要なのは、正しい姿勢でやること。正しい姿勢(フォーム)が体を効率よく動かし、最大限の力を出してくれる。
例えば、サッカーで言うとキック。
ボールを蹴るときの姿勢(フォーム)がきれいな選手は、サッカーが上手い。ガンバの遠藤やマリノスの俊介なんかがいい例。体はそんなに大きくなくても、あの素晴らしいキックが蹴れる。蹴るときの姿勢(フォーム)がいいから、体に余計な力が入らずスムースにボールを蹴ることができる。
サッカーだけじゃなく、野球、柔道、体操、水泳、全てのスポーツで同じことが言える。正しい姿勢で体を動かすこと、これが、少ない力で最大の効果を発揮する基本。よく覚えといて。
あともう一つある。
ドコが鍛えられているか意識する
意識すること。
意識する、ってのは、体幹トレーニングで、どこが鍛えられているか、を意識する、ということ。筋肉レベルで意識できるといい。
おなか(腹直筋)なのか、背中(広背筋)なのか、おしり(大殿筋)なのか、足(大腿四頭筋)なのか。どこに負荷がかかっていて、どこが辛い(鍛えられている)のか。これで、トレーニングしてる箇所(筋肉)が一層鍛えられる。
比嘉さんの本にも書いてあるわ。
Q 筋肉を意識すると効果は変わる?
A 20%程度効果が変わることもある。筋トレ中に鍛えている筋肉を意識すると、効果が大きくなることもある。実際に研究で動かしている筋肉を意識していると筋放電量が20%増になったという報告もあったそうだ。(以下略)
引用:自重筋トレ100の基本
(著)比嘉一雄(ひがかずお)
東京大学大学院博士課程
㈱CALADA LAB.代表取締役社長
つまり、トレーニングしている部分(筋肉)を意識しながらやることで、より効率的に体幹を鍛えることができる。
サッカー体幹トレーニングの方法でおすすめ3つの基本は何?
よしおがN先生から教えてもらった体幹トレーニング方法は、3つ。
この3つのメニューが体幹トレーニングの基本。
「サッカー上達の体幹トレーニング基本メニュー」と言ってもいいかな。
これをしっかりやることで、パフォーマンスが劇的にかわる。
- フロントブリッジ
- サイドブリッジ
- バックブリッジ
これらを1セットとすると、3セット繰り返す。
左右あるメニューは、両方やる。
そして、慣れてきたら、秒数を増やしたり、負荷を上げていく。
目安としては、60秒かな。
1セット×3回
・フロントブリッジ(60秒)
・サイドブリッジ(60秒)
・バックブリッジ(60秒)
できるんだったら、毎回プラス10秒足してやってみて。例えば、60秒でやるとしたら、60秒たった後、もう10秒だけがんばってみる。
限界だと感じてからどれだけできるかで大きく差が出る。
じあ、各メニューについて説明するな。
フロントブリッジでお腹(腹筋)まわりを鍛える
これは、フロントブリッジって呼ばれてて、体幹トレーニングの基本中の基本。
ヒジとつま先で体を支える。
姿勢は、首とかかとを結んだ線が一直線になるようにする。
意識するところは、お腹(腹直筋)。つまり腹筋。
お腹周り(腹筋)に、ギュ、っと力を入れる。
おしりの部分が下に下がったり、上がったりするとダメ。
体が真っ直ぐなるように意識してみて。
これは、前からみたところ、
これは、応用編。
上の普通のやつが余裕でできるようになったら、こんなのもやってみて。
片足を上げると負荷が上がる。
さらに、膝を曲げたり、伸ばしたり動きをつけると、負荷がもっと上がる。
サイドブリッジで横を鍛える
次は、サイドブリッジ。
片ヒジと足の横側で体を支える。
右側、左側両方やる。
姿勢は、これも、首とかかとを結んだ線が一直線になるようにする。意識するところは、足、おしり、足の横側。これも、体を真っ直ぐ保つことが大切。
上の足を浮かせると、更に負荷がかかる。
バックブリッジで後ろを鍛える
まずは、この形。
上向きで、背中の肩に近い部分と膝を曲げて足で体を支える。
姿勢は、これも、首とかかとを結んだ線が一直線になるようにする。
意識するところは、もも裏、おしり。
上向きで、肘とかかとで体を支えるやり方もある。
サッカーで体幹トレーニングを毎日やるポイントは何?
N先生から体幹トレーニングについて学んだよしお。
こんなことも教えてもらった。
体幹トレーニング中、トレーニング後は必ずストレッチをやること。
筋肉は負荷をかけると収縮する。なので、伸ばすことで疲労が溜まりにくくなるし、回復が早くなる。
あと、トレーニング後は、必ず何か食べること。
何でもいいわけじゃなくて、たんぱく質がいっぱい入ってるものがいい。
体幹トレーニングで使った筋肉に栄養を与えてやることで、筋肉の回復つまり、強い筋肉になる。つまり、トレーニング効果が出る。ゴールデンタイムってのがあって、トレーニングをした30分以内にたんぱく質を多く含む食事を取るのがいい。壊れた筋肉繊維が最も効率よく栄養を吸収する時間帯、というイメージ。
帰りにコンビニで菓子パンとかポテチとかはダメだかんな。
牛乳、ヨーグルト、チーズなんかがいいんで、ちょっと意識してみて。
2ヶ月後
みぞれまじりの雨が降る中、観客席には傘をさす人たちが、かたずを飲んで試合を見守っていた。
全国高校サッカー選手権岡山県大会決勝。
雨を含んだ芝は、ピッチにいる選手の体力をいつも以上に奪っているように見えた。
スコアは、0対0。
後半ロスタイム。
誰もが延長戦を予想していた時、ドラマは起こった。
緑色のユニフォームを着た10番の選手が、相手陣地でボールを受けドリブルを開始。その選手は、1人、2人とかわし、ペナルティエリア付近で3人目の相手の選手を抜きにかかる。抜きにかかったところで、相手に体を寄せられ一瞬バランスを崩したように見えた。だが、その選手は体性を立て直し強引に右足一閃(いっせん)。
右足で放たれたシュートは、目の覚めるような軌道を描き、サイドネットに突き刺さる。
1週間後
グランドの隅にある部室の前で、黙々と体幹トレーニングをやるよしおの姿があった。もう、見慣れた風景になっている。
よしおは、あの日から欠かさず体幹トレーニングを続けている。先週行われた県大会決勝でその効果を一層感じることができた。2ヵ月後には、全国高校サッカー選手権大会が控えている。
「よしお、また頼むぞ!」
よしおへ期待する声は、日に日に高まっている。
選手権でゴールを期待する声だ。
県大会決勝で決めたゴールのように。